水を手にした若者が 君に捧げる 喜びよ
おや、あの声は?
「アーサーじゃないのかい?」
と、マチアが聞いた。ちがう。アーサーの声ではない。だが、カピがほえて、うれしそうにその塀にとびついた。ぼくは、我慢できなかった。そして、叫んだ。
「だれ?歌っているのは?」
声が答えた。
「そちらは、レミ?」
マチアと僕は、あっけにとられて、顔を見合わせた。ふと見ると、塀のはずれの低い生け垣の辺りに、白いハンケチがひらひら風に舞っていた。ふたりは、そっちへ駆けだした。リーズだった!とうとうリーズが見つかったのだ。
それにしても、誰が歌っていたのかしら?ふたりは、ほとんど同時に聞いてみた。
「あたし」
と、リーズが言った。
リーズが!リーズが口をきいたのか!
前から、リーズは何か大きな感動を受けると、口がきけるようになるかもしれないと聞かされていた。それが本当になったのだ!奇跡が起こったのだ!二度と逢えないと思っていたぼくの歌を聞き、僕の姿をみたので、口が聞けるほどの感動を受けたというわけなのだ。